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No.975  質問に回答(前半)
発言者: ハーブ
発言日: 2002 12/18 02:34
佐々木俊尚様

お約束の、質問事項3点の回答です。
それに加え、最も強調したい重要事項を再録してあります。佐々木様からの2度目のご依頼メールとともに、自サイトに同一のものをアップ、ネット上公開します。

今朝になって知った、この木曜〆切ということで、出来る限り急いだため、
メール用の改行整形はしておりませんので、読みにくいかと存じます。
ファイル、ワード、その他形式のご希望があれば、整えたものを後刻
送付し直しますが、1時間でも早い方がいいであろうと考え、このままの
かたちでとりあえずメール送信します。

なお、「資料」ほか、まだお送りしたいものが多少残っております。
不要かもしれませんが、それらは今日深夜か明日午前送付予定。
***********************

>Q(1)今回の経緯について

最短距離の説明。すでにご承知の点も多いでしょう。PJがらみで重要なのは3.〜5.でしょうか。
ご質問はお受けします。前回ご紹介した以外に、参照用のシンプルな時系列は当サイトの
http://herbs.la.coocan.jp/history.html

1.「ロード〜」日本公開直後から、あの字幕は誤訳だらけだとの声がファンから相次ぎ、掲示板・公開質問状などで多くの指摘がされたが日本ヘラルドは無反応。⇒署名運動立ち上げ。5/30『誤訳の一覧』とともに日本ヘラルドに送付されたものは代表者サックビル=バギンズ、署名者1281人(ほかにも署名運動はあるが起点から終点までネットで情報が見られるのはこれ)。
2.それに対する日本ヘラルドの対応は、署名代表者にのみ書簡回答するが公開は禁止、署名者たちにも内容を伝えてはならないというものだった。次いで、通称「公式ページ」すなわち日本ヘラルドの運営するサイトに、問題の字幕に関する「発表」(※資料A)があったが、
★誤訳という言葉はなく、もちろん「お詫び」「訂正」などの言葉もなく、(要点引用)
・第一部のビデオ(VHS、DVDなど)の字幕は、劇場とは違い、*文字数の制限が多少緩和されるため*、戸田奈津子氏の原稿にビデオ版としての*手直し*を施す(注:*〜*はゴシックの代用記号 by ハーブ)
・手直し作業には、原作「指輪物語」の共訳者の一人田中明子氏と、版元である評論社が協力
・第二部、第三部の字幕は、戸田奈津子氏が翻訳、田中明子氏、評論社にご協力頂く予定
3.ファンの反応は二分。戸田氏の体面を守りつつも誤訳修正はなされるであろうと見る向きもあったが、この「発表」と、相変わらずの「戸田節」に怒った一群のファンは、日本ヘラルドにはもはや何を言っても無駄、事態認識能力も対処の意思誠意もないと結論。
★「こうなったらPJに直訴だ!」を合言葉に、英語での嘆願書作成作業開始。ネット上で内容項目の合議と、英文でどう表現するかを、1ヶ月にわたり論議して進め、かつ前回の署名運動との差を出すため実名プラス住所までつけて、参加人数150人の嘆願書がニュージーランドのピーター・ジャクソン監督と、合衆国のニューラインシネマ本社社長宛に送られた。
4.同時に、署名するだけでは足りないからと、個人個人でファンレター式に、監督や出演俳優たちへ字幕のひどさを訴えようという呼びかけ。そのための英作文添削しますサイト出現。英語文例を載せ英文手紙の書き方をアドバイス、またサイト主は、英語圏の大手ファンサイトに投稿、日本語字幕が脚本と全く違う酷い訳であることを海外のファンに訴える。「ロード〜」脚本家の一人からは、「作品を愛するあなた方の努力に感動した」との返事も来る。興行収入で「ロード〜」は世界第2位を記録したが、第1位「ハリー・ポッター」との差は、唯一日本でだけ「ロード〜」が大負けしたその差に一致、すなわち世界一を逃したのは日本で不人気だったせいと判明(CNN他、資料B)。
5.TTT世界公開プレミアのお祭り騒ぎのさなか、ジャクソン監督本人が、パリ・プレミアのインタビューで、「日本のファン達の手紙は受け取った。原作を何も知らず第一部で大きな間違いをした翻訳者(=字幕作家)を別の人に替えた」と明言するに至った。

************************************

>Q(2)映画字幕の問題点、戸田奈津子訳の問題点などについてどう考えるか
(映画全般の話、指輪物語特有の話のいずれでも)

《「ロード〜」の戸田字幕》
(映画を見てない原作読んでない人に分かるように書いてみました)

字数制限で内容が減ることとは無関係な「間違い」は二通りある。
1.誤訳。脚本の英語が言っていることと字幕の「意味」が大幅に食い違っている例が多過ぎた。ひどかったのは原作でも映画第3部でも登場する大国の現役権力者を、「(彼は)執政だった」としたため、観客はみなその人物がすでに故人である、または失脚してもう権力の座にいないと思ったこと。あまりに基本的な英語時制の読み違いであると同時に、原作を知っている観客にしてみれば、源義経が「兄の頼朝は生前に…」と語ったような衝撃を受けたのだ。義経は兄頼朝に追われて敗死するはず、頼朝は生きて鎌倉幕府を開くんじゃないか、と怒っても、「ヨシツネって誰?」という世代には通じないのと同じく、原作を知らない人間にはわからないことだが。

2.原作も英語も知らなくても気づく、人物や場面に合わない、とんちんかんな文体が頻出。少年が「僕」と言いながら「ここには置けん」と突如年寄り言葉になったり、「様」づけで呼んでいる同じ相手に「君」と言ったりしたため、誰が誰に話しかけているのやらわからない、という混乱が起きた。日本語の常識として考えられないほどのデタラメ。

3.「字幕は創作だ」との名言をふりかざし、原作と映画は違うんだから原作を読めというのは間違い、とまで公言。映画作品内の言葉を伝えようとせずその場面を見て勝手に解釈、大事な台詞は無視し、どこにもない台詞を堂々と捏造した。そのきわめつけが、第一部のクライマックスを担う重要人物、滅びに瀕した祖国を救いたい一心で、魔の『力の指輪』に手を伸ばす悲劇の武人が、主人公から「嘘つき」呼ばわりされたことである。この人物は、監督の一番の思い入れで原作以上の魅力と役割を映画の中で与えられており、本当の台詞は「あなたはそんな人ではない!(You are not yourself!)」字数に合わせて訂正されたDVD字幕では「正気に戻って!」である。「嘘をつくな」という、私利私欲のための意図的な行動とされては、その人物の性格も心情も、キーアイテムである『指輪=力の誘惑』も、すべて台無しだったのだ。

(つづく)

▼関連発言

973:取材のご報告#1(ド・長文) [ハーブ] 12/18 02:12
 ├974:取材のご報告#2(長文) [ハーブ] 12/18 02:27
 │└975:質問に回答(前半) [ハーブ] 12/18 02:34
 │ ├976:質問に回答(後半) [ハーブ] 12/18 02:41
 │ │├977:追加(再録)・資料・結び [ハーブ] 12/18 02:45
 │ ││└980:「質問に回答(前半)」に... [Evenstar] 12/18 05:54
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 │ │ │└982:Re:[半雑談]言いたい事.. [ふ] 12/18 12:56
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 │ │  └1003:資料交付異議なし・お任... [白い都] 12/19 02:50
 │ └1350:Re:質問に回答(前半) [Robin Gamgee] 01/12 02:22
 │  └1351:ごもっともです [ハーブ] 01/12 03:19
 │   └1376:ご丁寧にありがとうござい... [Robin Gamgee] 01/12 21:13
 ├1063:補足:取材のご報告 [ハーブ] 12/24 10:11
 └2579:mihpfq [mihpfq] 01/29 08:40<-last