旅行は好きだが、夏の恒例「子連れ帰省旅行」は別ものである。一週間は長く、行楽は疲れるし、老齢者の多い親戚（一親等含む）には気を遣う。自分の仕事はその前後にしわ寄せされて、ぶっ通しでキーボードに張りつかなくては終わらなかったし。そのサンドイッチのような「お務め」期間がやっと終わった。何をするかって、解放された、本が読める！である。

タイミング良く、ずっと読みたかった本が店頭で目に入った。

・『奇術探偵 曾我佳城全集』泡坂妻夫（講談社文庫、全二巻）

ついに出た！と小躍りしながら即、二冊とも買う。日本の現役作家で一番好き、といっていい、私の熱愛する書き手なのだが、本当はその事実はずっと隠しておくつもりだった。というのも、一般向けでない作品が多すぎる御方だからだ。直木賞受賞作をはじめ、誰が読んでも納得するものも少なくないが、妖しい系統の作品も多く、読み手によっては拒絶反応どころか、愛読者のほうが人格を疑われかねない特定の何作かもある。いったん泡坂マジックの虜になってしまった者には、どの作品もたまらなく良いのだけれど。

同じ日に、相棒がレンタル店（最寄りのビデオレンタルの店が最近貸しマンガを始めた）で借りてきたのが

・『陰陽師』岡野玲子（原作・夢枕獏）１〜５巻（全12巻刊行予定）

である。Off板で教えてもらったのは大分前なのだが（千雲さまごめんなさい！No.538)、他の幾多の本と同様「いつか読むぞ」のままになっていた。で、とっても面白かった。

その道に詳しい人にはアラもあろうし、そもそも超常現象方面が嫌いな人にはカスかもしれないが、私のような妖怪大好き・日本中国古典半可通にとっては、理屈抜きに楽しめた（いや、理屈があるからよけい楽しい）。今まで夢枕獏は私からは遠くにいた作家で、何やらエログロ入っていそうで（広告イラスト等からの先入観？）、たまに雑誌連載で見かけてもどうも文体が性に合いそうになく、敬遠していたのだが。うーむ、この博雅（ひろまさ）とこの清明の絶妙の掛け合いが原作どおりなのであれば、読まずばなるまい・・・と言っても、さすがにこっちは貸し本はないだろうな（本代は惜しくないが、本棚のスペースがなくて、よっぽどでなくては買えないのである）。

レス書きその他、不義理があちこちにたまっているのだが、とにかくどっぷりと読書の快楽に浸った２日間であった。あー、久しぶりに生き返った気がする。救いようのない本の虫である。